マリーゴールドの現実

「幻惑」から「現実」へ

自作の紹介、同人誌掲載の

 もう、伝濱野の広告は載らない。この間、様々な事柄を検索してきた。伝濱野は皇室御用達らしい。それにしては安価である。最近、買って読んでいる「フィガロジャポン」などをみると、単価が何十万、何百万という品が並んでいる。そんなに高価である必要がどこにあるのか。それに比して伝濱野は皇室御用達ながら、私でもちょっと奮発して買ってみようかというぐらいの値段である。確か、桁は間違っていないと思う。それにしても私にとって安いというものはないのだった。もし、皇室御用達と言いながら、庶民の手に届かないような値段設定だったら、おかしなことであろう。皇室は庶民のものだからである。ちょっとご褒美に奮発してといった場合に、利用できないならその価値はない。だが多分、私は桁を間違っていることだろう。日本のメーカーだが、日本人の体格に合ったサイズをということらしい。言い忘れていたが、バッグや財布などのメーカーである。

 まず初めて目にしたのは、このブログが90日間の間以上、書かれていない場合に出てくる広告だった。つまるところ、私は検索した覚えもなく、初めて目にする名称だった。しかし、その日から伝濱野は私の心のご愛顧である。いまだに買ってはいないが、財布の宣伝が賑わかしに載ってくるぐらいなら、いっそ何も載らない方がいい。多分、やんごとない方々のお目にも触れているのかもしれないこのブログだが、私は一介のブロガーにすぎない。もう一つ肩書き様のものはある。それは同人誌作家である。何か地に足のついた確実なものではないが、そういうことなのである。前回、この場を借りて掲載した「西九州文学」である。私は29号から参画している。42号まで世に出すことができた。34号には投稿できなかったが。12作は載ったことになる。今まで書いてきて、代表作などということは考えなかったが、同人誌活動の折り返し地点に立った今日この頃、ふと振り返ることがある。

 作品は子供のようである。それなりに慈しんできた。載っていない作ももちろんあるが、載った作の多くはパソコン上からも消えることが多い。パソコン屋さんにうまく伝えられなかったせいか、私が利用できていないせいかわからないが、題名の消えた作は多い。29号作の「長い季節」は載ったものの2倍はあったが、同人誌としては長すぎるし、盛りだくさんでそれ一つに閉じ込めるのは、もったいないと言われて半分にした。丁度、結婚したところで終わった。ある方に、結婚というハッピーエンドで終わること自体、破綻しているとご批判いただいた。私にそこで終わったという意識が薄かったこともあったが、30号作でも私は相変わらず、結婚を予感させる終わり方をしている。その作は世界的ピアニストとデザイナーの男女の話なのだったが、ピアニストは悪い男を書いたつもりだった。そうしたら同人誌のメンバーは、それぐらい普通だとおっしゃる。しかしそれよりも注目していただきたいのは、デザイナーの女性の父親、つまりピアニストの初期の師匠である音楽家である男だ。このジゴロみたいな男が、売りなのである。

 31号作は「移りゆく心」という私の大切にしている作である。洋子は家業を継ぐために医師になろうとしている。父親は医師で人格者である。母親は彼を養子夫として連れ添った人である。ちょっとわがままなところがある。洋子には結婚している妹がいる。彼女の夫がまた医師であり、その地の大学病院の勤務医をしている。洋子は忙しい学業の間に絵のモデルを頼まれた。その画家と恋仲になる。大切にしているとか言いながら私はこの話の細部を忘れている。洋子は大変な目に遭い、画家とは結ばれない。のちに続編を書いたが、この一種完成された文体、とは編集人の言ったことだが、その文体とは時代を画しているので、この「移りゆく心」の文体には遠く及ばない。この文体には二度と戻れないのだ。

 32号作は「秘密と愛」。これは不倫の話である。小さな地方都市へ、大企業に本社採用の後、やって来た男女の話である。細部がいいと思う。ぜひ手にとってお読みいただきたい。33号は「クリスマスプディングの日々」という。これも私の慈しんできた作である。34号はなしである。35号は「生きて行く」という神社の娘の話である。36号は「俺の居場所」という同性愛の男の話である。37号は「洋子ひとり」という作で「移りゆく心」の続編である。洋子の供養がしたかったので、書いた作である。文体はたどたどしい。38号は「葬りの日」という作で、ある夫婦の話だが、夫の方は大きな会社を辞め、妻に頼っていたが、とうとう離婚する。妻も嫌いで別れるわけではないが、どうもそうなる。39号は「徳太郎」。親戚の先祖の話である。40号は「ご飯重視主義」。私小説ではないが、読む人は私とその家族を重ね合わされる。41号は「独身絵図」。42号は「生きる歓び」。43号はまだ決まっていない。8月末日が43号の締切日である。